「おはようございますっ。」
「・・・・・・・・・。」
「おはよう、ふぅちゃん。」
「はい、おはようございますっ。」

朝食を済ませ、玄関を開ける。
いつもどおりの朝が展開されると思っていた矢先、予想外の人物が、部屋のドアの前に立っていたわけで。


「・・・・・・・・風子。」
「なんでしょうかっ。」
「今日は、月曜日なんだが・・。」

「そうですねっ。」
「びゅーてぃふるまんでーですっ。」

「おまけに、今は出勤時間だぞ。」
「早く行かないと、間に合いませんねっ。」

「いや、そんな事を聞いているんじゃなくてだな。」
「岡崎さん。今日から風子が、汐ちゃんを送っていきますっ。」

・・・・・・・え?

「な、なに?」
「風子が、汐ちゃんの毎日の幼稚園の送迎をするんです。岡崎さんはとっとと会社にいってくださいっ。」

こ、こいつは昨日の今日で、何言い出しやがる・・・・。
「ちょ、ちょっと待て。どうしてそんな話になるんだ。」

「風子は知っています。」
「岡崎さんは汐ちゃんの幼稚園のお迎えのために、勤務時間中に抜け出しています。」
「それではお給料も減るし、会社の信用もがたおちですっ。」

「んー、まあ、社長は分かってくれてるけど。」
給料だけはな、まあどうしようもない。

「それで、風子が汐ちゃんの送迎を代われば、お金は安定信用復帰、いい事だらけですっ。」
「おまけに風子は、汐ちゃんと過ごす時間も増えて大喜びですっ。」
「まったく損のない話ですっ。岡崎さん、後は風子に任せて会社に行って下さいっ。」

嬉々として話す風子。
その様子は、もはや自分の提案が受け入れられると、確信した様子であり・・・・。


「あのなぁ・・・。前も言ったけど、お前に送迎を、しかもこれから毎日なんて出来る訳ないだろ?」
「その・・・色々世間体だってあるし。」

「その点は大丈夫です。杏おねぇちゃんが言いつくろってくれます。」
「でもなぁ・・・。」



「パパ。じかん。」
「ん?むおっ!もうこんな時間か!」

「岡崎さん、迷ってる時間はありませんっ。男ならびしっと決めて下さいっ。」
「よし・・・・・分かった!」

「はいっ!では風ちゃ」
「走るぞ!汐!」
「え?」


俺はひょいっと汐を持ち上げると、アパートの階段を駆け下りた!
「えっ、ええ〜?」

「風子!合い鍵持ってるんだろ!?戸締り頼むっ!」
「え、ちょ、岡崎さんっ!?」

呆然とする風子をおいて、全力で道路に飛び出す。
走れば、何とか間に合う・・・


「なんなんですか・・・。」
「もうっ、最悪ですーっ!!」





・・・・・・・ま、間に合った・・!
久しぶりの全力疾走。
汐の事を省みない走り方をしてきたから、腕の中の汐はどうなってるやら・・・。


「あ、朋也。やっほー。」
「はれ。今日は王子様?」

今週も杏が、幼稚園の門の前にたっていた。
その杏の、汐を抱える俺を見ての感想。
「はぁ、はぁ、おはようございます、藤林先生・・・。」

「きゅう・・・。」
「あらあら、汐ちゃん目を回してるじゃない。」
「はぁーっ、じゃ、汐をお願いします・・・。」

「ちょっと、なにがあったの?今朝はえらく遅いじゃない。」
確かに、俺達以外の親子の姿はほとんどない。
いつもより、20分は遅い・・・。

「じ、時間がないんだ。急ぐからっ!」
「あ〜、もう、汐ちゃんを迎えに来た後、ちょっと待ってて!仕事、すぐ終わらせるから!」
「なんだよっ!」
「たまには、話しようよっ!」


・・・・・・なんだろ。それ。
まあいいか。とにかく会社へ!
間にあってくれっ!!


・・・・・・・・・・


「今日は散々だった・・・。」
あれ、なんか昨日もこんなこと言ってた気が。


とぼとぼと幼稚園へと向かう、会社帰りの俺。
ぐうう、いつも途中で会社を抜け出してる危うい立場なのに、今日は結局遅刻しちゃって、定時まで残らされてしまった・・・。

杏に電話して、それまで汐を預かっててくれと言っておいたけど。
あ〜・・・。夕日がまぶしい・・・。


時刻はもう夕方。

幼稚園にいた園児達はとっくに家に帰り、職員達は残業に追われる。
その敷地内で、今朝の口約束どおり、俺を待つ杏と、一緒にいる汐の姿を見つけた。

「や、朋也。汐ちゃん。パパが来たわよ。」
「パパっ。」
「おう、汐、待たせたな。」
「私も待ったわよ。」

「ああ。無理言って悪かった。」
「ま、いいんだけどね。こうして、話が出来るわけだし。」
「おう。仕事は、もういいんだな?」

「ええ。もう上がってるの。じゃ、ちょっとそこの公園までいきましょう。」
「私、バイク引っ張ってくるから、朋也たちは、先に行ってて。」

「おう。わかった。」
「おう〜。」

「ふふふ。すぐ行くからね〜♪」


にこやかに手を振って、駐車場へとかけていく杏。
あいつ高校の時から、あまり変わってないよな・・・。




幼稚園の近くの公園。
そこでブランコをこぐ汐。
俺はそんな汐を、事も無げに見ていた。

「ねえ。」
「ん?」
「パパとせんせいは、おともだち?」

「まあ・・。友達っちゃあ、友達だな。」
「ふ〜ん・・・。」

汐からすれば、全然知らない人だった藤林先生が、自分の父親と知り合いだったなんて、不思議でしょうがないんだろうな。

「きのう、せんせいもたのしそうだった。」
「ん?ああ。昨日は先生も来てたんだったな。」

「パパは、おともだちがたくさん。」
「そうかも知れないな。もうこの街から出て行った奴もいるけど、昔は結構いたな。」

あのバカ春原や、妹の芽衣ちゃん、それに学校一の秀才だった、ことみ。
もっとレベルの高い勉強をするために、今は外国にいるんだとか。


生徒会長を務めた智代も、どこかの党に入って、国の政治を変えるために頑張っているらしい。
もう、遥か遠くの世界の人間になってしまったな・・・。


有紀寧ちゃんは、今何をやってるんだろうか。
高校の資料室の癒し系少女、有紀寧ちゃん。
風の噂によると、どこかの組の組長と縁を結んだとか、はたまた組を自ら立ち上げたとか、いやいや平凡な奥さんになったとか、噂の数は計り知れない。

確たる話がないのでなんとも言えないが、きっと幸せな生活を送っているだろう。うん。


「せんせい、パパをじっとみてた。」
「え?」

「きのう、ごはんたべてるとき。」
「杏、いや藤林先生がか?」
「うん。」

「気がつかなかったな・・・。」
「パパ、ふぅちゃんばっかりみてたから。」

「・・・・。」
子供って、よく見てるよな・・・・。

そりゃ、昨日はあんなことしちゃったわけだし・・・。
風子の事が、気にならないはずがなくて。
ついちらちらと、見ていた訳なのだが・・・。

「なんで杏が俺を見てたんだ?」
当然の疑問が浮かび上がる。
「パパ、顔に何かついてたか?」

「ううん。」
「そうだよな・・・・。」


「やっほー。お待たせ。」
その杏が、愛車の音も高らかにやってくる。

「よいしょっと・・・。」
スタンドを立て、俺達のほうに駆けてきた。

「さぁて朋也、今朝何があったのか、聞かせてもらいましょうか。」
「ああ。そういう話だったな。」


俺は今朝の、風子との話の内容を、簡潔に話す。


「はぁ、そりゃまた急な話よねぇ・・・。」
「だろう?そんなの、今朝になっていきなり言われても、はいそうですかって、返事できるわけがないじゃないか。」
「ふむ。まあ、そうよね。」

「どうした?」
杏は下をうつむき、少し考えるような仕草を取る。

「汐ちゃんは、どう思うの?」
「ん?」
「汐ちゃんは、ふぅちゃんに毎日幼稚園に送ってもらえるの、どう思う?」

「う〜ん・・・。」
「うれしい。」

「マジか!?」
思わす声を出す俺。
「ふぅちゃんとはなししてると、とってもたのしい。」
「そうなの・・・・。どう?朋也。あんたの娘の感想は。」

「ありえねぇ・・・。」
「汐ちゃんは懐が深いわねぇ。それに引き換えあんたときたら、器の小さいこと。」

「ぐぐ・・・・。だって風子は、俺達の家族でもないし・・・。」
「あら、昨日宣言しちゃったんでしょ?「俺達は、汐の保護者だ」って。」

「む・・・・・・。」

そういえば、勢いで風子にそんな事を言って、夕食に無理矢理話させられたような・・・。
「今日のことは、あんたが原因なんじゃない。だからふぅちゃんはそんなこと言いだしたのよ。」

「責任、とるべきじゃない?」
「っむむ・・・。」

残念だが、杏の言うことはもっともだ。
風子の提案は、俺の言葉を信じたからだ。
なのに俺がそれを無碍にしては、あいつの信頼を裏切ることに・・・。



「・・・・・ふぅちゃん、本当にあんたの事好きよね。」
「えっ!!?」

「お似合いよ。おっさんと女子中学生、理想の援交カップル♪」
「おまえは・・・。まだそんな事いってるのか!あいつと俺は同じ歳だって!」

「へへ〜。そんなの本人から聞いて知ってるわよ。」
「・・・・・・知ってたのか。」
「分かってて、からかってたに決まってるじゃない。」

そういって、杏は向こうを振り向く。
先生になってからの髪型、ポニーテールの髪が揺れる。

「杏・・・・?」
「・・・・・・・・だって、妬けたから。」
「え・・・?」



「汐ちゃん、かくれんぼしようか?」
「うん。だいすき。」

「えへへ。そうよね。汐ちゃん、隠れるの得意だもんね。担任の市井先生、いつも困ってるもの。」
「うん。」
「じゃあ、先生が鬼よっ!隠れる時間、30数えるまでっ!」


「わ〜。」



汐が公園の中に消えていく。
・・・こんなところ、こんな時間にかくれんぼ?
どういうつもりなんだろ。

いや、・・・そうか。 汐に聞かせたくない話なんだろう。・・・・きっと。


「杏・・・。その、妬けたって。」
「ああ、あ、あはは・・・。聞こえた、よね?」

杏が顔を赤くする。 なんか、珍しいモノを見た気がする・・・。



「あはは・・・・・・・・。」

「・・・なんかさ、こうやって話するのって、久しぶりだよね。」
「ああ、まあ、そうだな。それこそ高校生の頃まで遡るわけで。」

「いろいろ変わったよね・・・。あたしはあんまり変わらないけど、あんたは結婚して、子供までいるんだから。」
「なんか、こうやってお前と話してると、そういうの全部夢で、まだ自分は高校生なんじゃないかって気がする。」
「あはは。それ分かる〜。わたしも、今家に帰ったら、椋が待ってそうな気がするもの。」

「ああ、あっちの藤林は・・・。」
「もう、結婚して家を出ちゃった。」
「そうだったか・・・。」

「知ってた?あの子高校生のとき、あんたのこと、好きだったのよ。」
「なッ!!?マジか!!?」
「・・・・本当に知らなかったみたいね。あの子も不憫だったわ・・・。」

「私、椋を応援してたんだから。その、あんたとうまくいくように。」
「それも知らなかった。」
「だってあんた、椋にすっごく冷たいんだもん。あの子が一生懸命話しかけてるのに、全然相手にしないんだから。」

・・・そういえば、そうだった気がする。



「椋に告白したい奴がいるって、あの春原が言って来たときはびっくりしたわよ。」 「あたし、てっきりあんただと思ってたのに。」
「ははは・・・。」

それは実は藤林を呼び出すための方便とばれた時は、目の前のこいつに恐ろしく睨まれたもんだが。
「でも、あの時いたあの子が、あんたの彼女だったのよね。渚。」
「ん〜、まあ、そのときはそうじゃなかったけど。」


「懐かしいなぁ・・・。高校時代。」
「卒業して、みんな離れ離れになったよな。」

「うん。みんなそれぞれの道を歩いていって・・・。」
「お前は、県外に出て、先生の勉強だったか?」
「うん。それでね、一人暮らしして、忙しい毎日を送ってて、そしたら、なんかもう、みんなとは二度と会えない様な気がしてた。」

「その土地で、新しい友達が出来て、前にいた地元の子とは、だんだん関係が薄くなって。」
「あんたとも・・・。もう会えない気がしてた。」
「・・・・・・・・・・・・・。」

不意に寂しそうな顔をする杏。
俺はその表情に、言葉を呑む。



「でもね、私、びっくりしたのよ。念願の幼稚園の先生になって、その就任先の幼稚園に、岡崎 汐って、あんたの子供がいるんだもん。」
「あんたの名前を聞くの、高校卒業以来でしょ?渚の葬式には、出られなかった訳だから・・・・。」

「ああ。あの時お前、よその大学にいたわけだからな。」
「うん・・・。あ、悪かったって、思ってるのよ?」
「もう、いいって・・・。話、続けろよ。」

「うん。・・・渚が死んで、あんたは荒れてて。幼稚園にやってくるのは、渚のお母さん。」
「私、ずっと心配だった。あ、変な意味じゃないのよ!?その、子供ほったらかしてなにやってんのよー。みたいな?」

「・・・おう。」
「あんたとの再会は、1年が過ぎ2年が過ぎ、汐ちゃんが卒園する歳になって、やっとめぐってきた。」
「長かったなぁ・・・。」

「・・・・・・。」



俺はじっと聞いているだけ。
でも。こいつ、そんな風に思っていたのかと、目からうろこの落ちる思いだった。
渚を失って荒れた5年間、俺はどれだけの人間に心配をかけたんだろう・・・・。

「なんか、その、ごめん。」
「あ、そのことはもういいの。こうして、ちゃんと毎朝来てるわけだし。」

「んあ、あ、そうか?」
「うん。で、私にも、ちょっとは巡ってきたかなって、思った訳で・・・・。」

ごにょごにょと口ごもる。 「ふえ?」



「私、間が悪いのかしらね・・・・。」
「なにがさ?」
「だって、だってよ。散々待って、でもあんたは援交してて、かわいいふぅちゃんと一緒にいて。」

すねたように言う。
いや、援交じゃないけど。

・・・えーと、つまりそれは。

「おまえ、風子に・・・・・・・・。」
「なっ!?ばばばばっばばばばばか言わないでよっ!」

「あたしはそんな、あんたに会うのが楽しみだったとか、あんたと会ってどうこうしたかったとか、そんなの、全然、全く、ちっとも考えてないんだからっ!」
「・・・・・・・・・・・・いや、そんなこと一言も言ってないんだが。」
「んあーっ、このばかぁーっ!」



・・・・・・・・。

さっきの杏の言葉『妬けたから・・・。』は、風子の事を指していた。
杏が、やきもちを焼いていた相手は、風子だったということだ。
仲がよさそうに見えたんだけどなぁ・・・。



「むー・・・。」

ん?
汐が茂みから顔を出す。

「せんせい、いつになったらさがしにくるの?」
「あ・・・ごめん、汐ちゃん。」
「はは・・・。」

俺も苦笑い。
俺もすっかり汐のこと、忘れてた・・・。







「じゃあ、ここで。また明日ね。汐ちゃん。」
「さようなら、せんせい。」

「はい、さようなら。朋也も、また明日。」
「ああ。あ・・・・いや、」

俺は返事してから気がつく。
「杏。俺、風子の話、呑もうと思うんだ。そのほうが、確かにいろいろ都合がいいからさ。」
「・・・そう。うん。そうか、そうだよね。うん。あはは・・・。」

杏が力なく笑う。

「じゃ、明日からふぅちゃんがくるのね。楽しみだなぁーっ。だって、もうあんたのその汚い作業着姿を見なくていいんだもんねっ。」
「ぐ、うるさい。この作業着は俺の誇りだ!」

「そうやってさ、毎日汐ちゃんを送り迎えするんじゃ、もうほとんど親子だよね。」
「なんだよ?何が言いたい?」

「あんたたち、結婚しちゃえば?」

「な・・・・・・・・・・・・・・・っ!!」
「あはは。真っ赤だ〜♪」
「杏っ、お前、そんな簡単に・・!!」

「いいじゃん。お似合いよ。」
先ほどまでの笑みは消え、少しだけ哀愁を漂わせる表情を見せる。



「杏・・・・?」
「じゃ、じゃあね!あしたは、遅刻なんてしちゃだめよ!」


ぺっぺっぺっぺ〜、ぺぺぺぺ〜・・・・。


「行っちまった・・・。」
「パパ。」
「ん?」

「おなか、すいた。」
「あ、ああ悪い。早く帰ろうな。」
「うん。」



「パパ。」
「どうした?」

「あしたから、汐はふぅちゃんといっしょにようちえんにいくの?」
「おう。そうだぞ。風子には、帰ったら電話するからな。」

「たのしみ。」
「そうか。」
「うん。」



嬉しそうな汐の顔。
風子といられるのが、よほど楽しみらしい。

こうなってくると、こうやってバラバラに暮しているのが、不便に思えてくるな・・・。
いっそのこと一緒に住めば、効率がいいんだけど。

「―――――――!」

それは、風子と結婚するということだ。

・・・・・・・・。

なんか、ないだろ。それは・・・・。
でも。





「あんたたち、結婚しちゃえば?」

「いいじゃん。お似合いよ。」




杏の言葉がよみがえる。
でも、そんなの、杏と結婚するってくらい、ありえない。

・・・・・・・・・。

そういえば杏は、なんで風子に嫉妬してたんだ・・・・・?




あんたに会うのが楽しみだったとか、あんたと会ってどうこうしたかったとか、そんなの、全然、全く、ちっとも考えてないんだからっ!




これも先ほどの杏の言葉。
俺に会うのが楽しみ?
まさかな・・・・・・・。

俺とあいつは中学からの腐れ縁。今は汐の保護者と、その幼稚園の先生の関係だ。
それ以上、どうなるって言うんだよ・・・・。



「パパ。」
「ん?」

「いちばんぼし。」
汐の小さな指が指し示す先。

「ああ。本当だな・・・。」
俺たちを見下ろすように、この夜一番目の星が、輝いていた。

「一番星を見つけた人はな、幸せになれるって言うぞ。」
「ほんと?」
「ああ。明日、きっといいことがあるぞ。汐。」

「うれしい。」
「あした、ふぅちゃんにあえる。」
「風子に会えるのが、幸せなのか?」 「うん。」

「そうか・・・・。」 幸せな明日を思い、笑う汐。
その笑顔をいつも見ていられるなら、風子との結婚も悪くない・・・・。そんなことを思う。




・・・・でもなぜだろう。
さっきの、別れ際の杏の寂しそうな表情。

俺はそんな杏の顔が、頭から離れなかった。