大きな雪だるま


夢を見ていた。
栞との夢
大きな雪だるまを一緒に作って・・・
楽しいことをする夢
それが、たった今、夢から現実になろうとしていた。
現実だと気付かないほどの夢のような現実に・・・

名雪「行くの?」
名雪が心配そうに見ている。
名雪「祐一、ファイトだよ」
いつも、名雪の優しさには元気付けられてしまう。
秋子「祐一さんの晩御飯は、すぐに温めれるようにしておきますね」
祐一「すみません、秋子さん」
相変わらずこの家庭の優しさは辛い。
おれの大事な人のことをとても理解してくれている。

商店街に着いた。
栞「祐一さん」
そこは、雪の降る商店街
とてもにぎやかな場所
でも、そんな商店街は、二人しかいない。
普通の二人ならそこは今だけ静かな場所となっていたかもしれない。
だけど、仲のいい二人だったからそこはにぎやかな場所となっていた。
栞という少女が祐一を呼んでいた。
祐一「どうしたんだ?」
栞「あの・・・」
祐一「あっ、鳥が飛んでいる」
栞「話を聞いてください」
祐一「風がつめたいな〜」
栞「そんなこと今は関係ないです」
祐一「栞、俺はお前が好きだ」
栞「そんなこと言う人、嫌いです」
嫌いなんだ・・・。
ショック。
祐一はふざけていたことを後悔した。

栞の病気も治った。
ホントに奇跡を見せられてしまった。
それから、一年後の冬だった。
一年後の栞の体は夢みたいに元気になっていた。
去年より寒いのだが、まったく寒さを感じさせてくれない。
おれの感覚がおかしくなってしまったのだろうか。
いや、そうでない、栞が元気になってしまったからだ。
これじゃあ、今年の方が寒いと思う方がおかしいに決まっている。

栞「大きな雪だるま作りたいです」
この夢を叶えたい。
祐一「作ろうか、大きな雪だるま」
今まで作ったことのないほどの大きな雪だるま

手が冷たい
栞は冷たそうにしている。
祐一はやめた方がいいかなっと思った。
栞「できました」
確かに誰も見たことのない雪だるまの大きさだった。
こんなに小さな雪だるま誰も作ったことはない。
栞「手のひらサイズの大きくて可愛い雪だるまです」
栞には大きいのかもしれないが、普通に小さい。
でも、栞らしくて可愛い。
祐一は落ちている小さな石ころで目と口を作った。
最後に頭に小さな落ち葉をのせた。
落ち葉は帽子。

栞[これで、大きい雪だるまですよね」
雪だるまの大きさが変わった。
祐一「ああ、当たり前だ」
何も知らない人から見たら誰も見たことのないぐらい小さな雪だるまかもしれない。
だけど、二人から見たらだれも真似できないような大きな雪だるまだった。
二人で作ったから、あつい心が大きかった。
とてもじゃないけれど、たえられるものじゃないぐらい。

その大きな雪だるまをたくさん作った。
二人を囲ってしまうぐらい。
囲まれた雪だるまは二人を見ていた。
栞「こんなに大きな雪だるまに囲まれたのは初めてです」
祐一「そうだな」
祐一「踊ろうか」
栞「そ、そんな・・・、恥ずかしいです。そんなこと言う人、嫌いです」
祐一「俺は好きだ。そんな栞が好きだ」
二人は今日も幸せを持ち続けていた。
栞「でも、そんな、祐一さんが好きです」
噴水の目の前で・・・
小さくて大きな雪だるまに囲まれながら・・・
二人は進んでいく。
進んでいく。
もう、気付いたときには、戻れない場所にいた。
誰にも、追いつけない場所にいた。